ループする日常の崩れ時

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ループする日常の崩れ時

無意識にいろいろすっぽかしてしまう性格になったのは、小さい頃から人間が怖かったからだろう。 恐怖を感じてまで関わりたくない、同類の動物がいるから。 家を出たくない……学校は行かなきゃ、最低限。 「うわぁー、また今日も雨?最近多くない?」 母さんに質問を投げかけて今日が始まる。 神様もなんか嫌なことあったんじゃない、と母さんは流す。 雨が降ると母さんはよくそう言う。 そういう思考ができて羨ましいよ。 そう思いながら朝の支度を整えて学校に向かう。 いつもの……平和なループだ。 お気に入りのパーカーを着て学校へ行く。 誰もいない路地で、傘から地面に落ちる雫を無関心に眺めながら歩む。 ふと、視界に座り込んでいる影が見えた。 通り過ぎようとして思いとどまる。 ……雨打ち付ける地面に座る? 顔を上げてその“ひと”を見る。 白いワンピースを身に纏った女の人。 どれだけ人間が怖いと言えど、放っておくことは流石に無理だった。 「え……えっと、だ、だいじょうぶです、か……?」 僕の声に女の人は顔を上げる。 殴られた跡にも見える、赤い傷がついている。 「へ、あ、ああ!全然大丈夫だよ!ごめんねここ邪魔だよね!」 いわゆる陽キャと言われる類の……? うわ、無理かも、吐きそう。 いやでもこの傷……? 「と、とりあえずこれどうぞ、さよなら……」 僕は自分の思考を遮断しつつ、傘を押し付けて走って学校へ行く。 「えぇちょっと、君、えぇ!?」 彼女が何か言っている気がした。 まぁ、もう会うことはないだろう。 だっていつも通りのはずだもん。 ないない、まさか。
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