愛の夢

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         -10- 「おめでとう!」  東雲君が控室に来て私に言った。 「ありがとう。私、幸せです」  私はナンバーワンになった。  普段着に着替え、ホールから出て、私は理事長の送迎車に乗せてもらった。なぜか東雲君も一緒に乗った。 「ありがとうございました。おかげさまで最優秀賞を獲ることができました!」  私は後部座席からと助手席の理事長に言って頭を下げた。 「これは、まだスタートに過ぎないと思わなくて?」  理事長が振り返ってクールに言った。でも嬉しさが表情ににじみ出ていた。  学校までの長い道のりの中、私は理事長と東雲君とピアノのことばかりを話した。  学校に着いた。 「光莉さんをあの場所に連れて行ってあげて」  理事長が東雲君に言った。 「はい」 「あの場所って?」 「ついて来て」  車から降り、私は東雲君とその場所に行った。それは校舎の建物の離れに建てられた円形の小さなホールだった。以前から何の建物だろうと気になっていた場所だ。 「ピアノ専用のホールだよ。ここもピアノ部で使っていいって」 「え?」  中に入ると、天井の採光窓から優しい光が降り注ぐ素敵な空間だった。木で組まれた壁や天井が美しい。 「ピアノは音楽室にあるスタインウェイを持って来るよ。ここで弾くともっといい音に響くんだ」 「はあ・・・」 「ほぼ光莉さんのためだけのホールだよ」  呆然としてホールの中を眺めていると、私のスマホが鳴った。1年3組の東西茜からだった。 「ごめん、光莉。今、親から連絡が来たんだけど、私、急に転校することになって・・・」 「え・・・」    
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