命短し恋せよ乙女

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君に恋をした。 昔から人よりも物事をそつなくこなせた。 勉強もスポーツも、何でも人よりも出来た。 けど、それと同時に何も好きになれなかった。 学生だからと、勉強を好きになろうとした。 背が高くて運動神経も悪くないからバスケを好きになろうとした。 顔が良かったから人から送られた好意に応えようとした。 人を好きになろうとした。 けれど、無理だった。好きになろうと空回りするばかりだった。 歳を重ねれば、いずれ限界が来ると思っていた。才能だけでは突破できない壁があると信じていた。そんな希望を持っていた。 ろくに勉強もせずに国内でも最難関と呼ばれる大学の模試を受けた。確かに最難関と呼ぶにふさわしい問題ばかりだった。知識だけではどうにもならない秀逸な問題ばかりだった。 だが、それだけだった。 少し勉強すれば、解けない問題はなかった。 きっと、死ぬまでこうなのだろう。静かながらに絶望した。だからなんだと言うのだと思ってしまった自分にまた絶望した。 そんな折りに君に会った。 クラスでも男女問わず人気な君。決して頭が良い訳でもなく何かが優れているという訳でもない。けれど皆から好かれていた。太陽のようにただいるだけで雰囲気を明るくさせる天真爛漫な君。才能だけしかない私には手の届かない、まさしく高嶺の花。 そんな君を曇らせたくなかった。 初めはただすごい人だと思っていた。 その内、誰よりも気にかける人になっていた。 君が席に戻ったあと退屈だった授業が、何よりも煩わしいものになっていた。早く授業が終わって君の笑顔を見たかった。 そして、その笑顔を誰かにすることが腸が煮えかえるほど嫌になっていた。 その時に恋をしていると思った。17年間生きてきて初めて欠けたピースがハマったように力が抜けて、顔が熱くて、妙に足をバタバタさせたくなっていた。 それから君の顔を見れなくて、あまりにも恥ずかしくて初めて学校を早退したんだ。 家に帰ってがらんとした自室で今までにないくらいはしゃいで、この気持ちは伝えることは無いだろうと思った。 君を決して曇らせたくはなかったから。
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