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ひょっとして友人は、最期に俺を楽しませようとしたのではないか。
死ぬ間際にドキドキワクワクを与えようとして、あんな魔法のポケットなんて突拍子もないことを言いだしたのではないか。
俺の命が風前の灯だと気づいて、未来に可能性を感じたまま死ねるようにと思い、文字通り命を懸けてふざけた友人の心中を想い、俺は涙せずにはいられなかった。
ありがとう。本当にありがとう。
俺はもう天国へ向かっている。引き返すことは無理だ。
そのビスケットを食うことはできない。
お前はなんの気兼ねなしに割れたか増えたかしたビスケットを食って、運よく救助されて、あとからゆっくりくればいい。
俺は地上に向かって手を合わせた。はるか遠くなった雪洞に向かって手を合わせ、俺はそうなるよう祈るばかりだった。
それにしても、
「神様はサイコロを振るんだな」
おわり
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