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隣には静かに友人が横たわっていた。
友人は、もうずっと前から静かになっていた。
「おい」
俺の呼びかけに友人の両目が薄く開いた。その目は生気をすっかり失っていた。
「しっかりしろ」
雪洞の壁をひと掴みし、削り取った雪を手の中で溶かした。そうして手から滴り落ちる雫を友人のクチビルへと垂らした。
雫が口の中に滑り落ちていくと、喉仏がゴクリと上下した。
「こらえろよ。生きて、帰るぞ」
自分もギリギリの状態なのによく言えたものだ、と俺は泣きそうになった。そんな俺の心の中を見抜いたのだろうか、友人はニコッと笑った。そして吹雪にかき消されてしまいそうなぐらい小さな声でボソッと呟いた。
「ハラ、へったな」
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