もしもーし

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「ここはどこでしょうか?」 「わかりません。どこなのでしょう」 「真っ暗で何も見えませんね」 「はい。少し寒いです」 「僕は気が付いたら、ここにいました」 「僕も気が付いたら、ここにいました」 「怖くないですか?」 「そんなには」 「ですよね。僕も意外に大丈夫です」 「僕は拘束されていませんが、そちらはどうですか?」 「はい。大丈夫です」 「それはよかったです」 「はい。本当によかったです」 「でも、ここにいるのは、僕たちだけなのでしょうか?」 「わかりません。でも、僕たち以外いないように思えます」 「本当にそうでしょうか?」 「というと?」 「僕には他に、誰かいるように思えてならないのです」 「どうしてそう思うのですか」 「何となくとしかいいようがありません」 「そうですか。でも、もし、僕たち以外に誰かいるとしたら、どうしてまだ何も言わないのでしょうか?」 「わかりませんが、喋れる状態ではないのではないですか?」 「なるほど。ありえますね。もしそうだとしたら、助けなきゃダメですね」 「ですね。とりあえず、声をかけてみましょう」 「もしもーし、誰かいますか?」 「大丈夫ですかー。喋れますか? 喋れなければ、何か音を立ててみてください」 「ちょっと僕、手探りで探してみます」 「お願いします」 「もしもーし、大丈夫ですか?」 「もしもーし、動けますか?」 「もしもーし」 「もしもーし」 「もしもーし」 「もしもーし」 「もしもーし」 「もしもーし」  その時、突然、明かりがついた。殺風景な部屋には何もなく、天井にスピーカーがついているだけだった。 「もしもーし」 「もしもーし」 「もしもーし」 「もしもーし」 全身を縛られ、身動き一つ取れない私の耳に、男二人の声が次第に遠くなっていった。
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