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春
僕はどこにでもいる普通の会社員、という設定にしている。本業は忍者だ。敵陣調査や巻物の奪還、さらには暗殺も承る時がある。
いや、厳密に言えば「あった」が正しい。時代の変化なのか、昨今の忍者業は閑古鳥状態。今では月に1回任務があれば良い方だ。
かつてこなしたS級ランク任務でなんとか食い繋いでいるが、いつ貯金が無くなってもおかしくはない。確か前回の任務は犬の散歩だった気が。もはや何でも屋になりつつあるのが現状だ。
そんなある日、いつものように暇をしてると、金賀(コンガ)先輩が突然現れた。
まるでゴリラのような筋肉が特徴のマッチョ系忍者だ。表向きはプロのボディビルダー。なんと世界王者に君臨したほどの実力者である。忍が目立っていいのだろうか?と疑問に思ったが、筋トレを辞められないらしい。
「忙しいところ、すまんな」
「いえ、ご覧の通りすっかり暇してるので大丈夫です」
「実はな、お前に大事な話があって・・・・・・」
「どうされました?」
不安な気持ちが増した。
「うーん、非常に伝えづらいのだが・・・・・・そろそろ忍者業を廃業しようと思う」
その話を聞いた時、僕は傷つくのかと思っていた。だが、正直あまりショックを受けなかった。薄々そうなると予感していたからだ。最近は赤字垂れ流しで、まともに経営できていない。数百年続く忍者の歴史がここで途切れるのは悲しいが致し方ない。これも時代の変化だ。
「詳しい話はまた後日。俺は今から最後の任務に行ってくる」
「お気をつけください」
「じゃあな」
僕は天井を見上げた。
「はぁ、本当に就職するかー・・・・・・」
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