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半年後
あれから半年が経過した。もしかするとまた任務が再開するのでは、そんな淡い気持ちを抱いていたが、一向にその気配はなかった。
「このままで良いのだろうか?」
無気力状態がしばらく続き、半年間、無職状態で何も仕事をしなかった。だが、そんな僕にもどうしても欠かせない日課が二つある。
一つ目が大好きなゲーム。いつでもプロゲーマーに転身できるよう今日も四時間ほどプレイした。ゲームをしている間は嫌なことを忘れられる。最高。本当は永遠にプレイしていたい。
二つ目がテクノロジーのニュースチェック。忍者とテクノロジーは一見無関係に見えるが、実は大いに関係がある。最近はテクノロジーを活用した科学忍具が開発され、攻撃力や防御力が普通の忍具よりも数倍増した。もしも任務再開した時に、素早く忍具を使えるように情報は逐一確認していた。
今日もいつものように、テクノロジーニュースをチェックしていると、ある記事が目に止まった。
『十歳の少年の絵が数億円で売買!? いま話題のNFTとは?』
「NFTか・・・・・・」
実は第一次ブームの時に情報はキャッチしていた。しかし、任務とは無関係だと思ったし、何よりもなぜこんなイラストが(というと失礼かもしれないが)、何千万、何億と価値が付くのか全く理解できなかったのもある。
しかも、個人的には全然心に刺さらない。と言うのも昔からかなり漫画には精通しており、日本のコンテンツレベルの凄さを身近に感じているからだ。世界中の人を熱狂させるほど日本には魅力的なキャラクターが多数いる。
失われた数十年と言われ、最近の日本は低迷気味。そんな日本経済を救う唯一の鍵がNFTだと本気で信じている。なのになぜ日本ではNFTが流行らないのか・・・・・・。
すると突然、頭の中を稲妻が走った。
「あっ!」
思わず声が出てしまった。
「そうだ、自分でNFTを作ればいいんだ。幸い今は時間に余裕がある。とはいえ、どんなNFTを作ろう」
数十秒考えた結果、ある一つのテーマが頭に浮かんだ。それは『忍者』だ。近頃の閑古鳥状態と日本の衰退状態が妙にリンクした。
「名前はそうだな・・・・・・」
頭を悩ませた。
「・・・・・・クリプトニンジャはどうだろう?」
うん、日本らしく納得感がある。ただ、ここで問題が発生した。僕は絵を上手に描けない。
そこで軽率かつ唐突に、SNSでイラストレーターを募集してみた。すると早いもので何名かからメッセージが届いた。その中でひときわ目を奪われたイラストがあった。
「何だこれは・・・・・・」
不思議と体全体が引き込まれた。すぐさまアカウントを確認すると、名前は寝夢(ネム)と書かれていた。フリーのイラストレーターらしい。
この機会を逃せば一生後悔する、直感に従い寝夢さんに連絡を取った。
正直、どんな人なのか全く分からない。年齢も性別も顔も何もかもだ。
ただ、テキストでのコミュニケーションコストの低さやイラストの完成度、スピード感などどれも申し分なかった。私は即座に寝夢さんとタッグを組んだ。
ニヤニヤしながらリビングに行くと、スマホを触っている娘と目が合った。
「お父さん何ニヤニヤしてるの?ちょっと気味悪いよ」
「気味悪いって失礼な。久しぶりに嬉しいことがあったんだよ」
本当はクリプトやNFTを説明したかったが、おそらく理解してもらえないだろう。それに父への興味関心も薄そうだし。
「ふーん」
案の定興味がないのか、また娘はスマホに向き合った。
まぁ娘よ、見てなさい。お父さんはこれから日本の田舎から革命を起こすぜよ...!
それから、僕たちは何度もやり取りをし、遂にクリプトニンジャをリリース。記念すべき1作品目は、これぞザ忍者というイラストに仕上がった。名前は『刃』。初めての経験でどうなるか不安だったが、無事に完売した。
そして今は次の作品に早速取り掛かっている。基本的には、どんなイラストを描くかは寝夢さんに一存している。ただ、2作品目に関しては一つだけ要望を伝えた。それが、クノイチを描いて欲しいという思いだ。
親のエゴが働いたのかもしれない。もしも娘がクノイチになったら?そんな想像を膨らませながら、参考程度に娘の特徴を少しだけ伝えた。
数日後、出来上がった作品を見て驚愕した。なんと娘と瓜二つだったからだ。もしかして寝夢さんは千里眼を持っているのだろうか?どこからどう見ても、咲楽にしか見えない。
そこで、2作品目の名前は、娘の咲楽(さくら)から少しもじって咲耶(さくや)に決定した。
それからクリプトニンジャはどんどんキャラクターを公開した。その間、アニメ、マンガ、ゲームなど派生し、多岐にわたり多くの人から愛される作品となった。
気が付けば10年が経過していた。
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