プロローグ

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「イケバヤ先生、ありがとうございました。それでは、続きまして寝夢(ネム)さんの登場です! 盛大な拍手をお願いいたします!」 歓声と拍手で会場が盛り上がった。 寝夢さんはどんな人なのだろう、ワクワクした気持ちを抱きながらステージ横を確認した。コツコツと足音が近づいてくる。その姿を見て衝撃が走った。 「なぜここに・・・・・・?」 なんと目の前にいたのは紛れもなく咲楽の姿だった。変化の術なのか?目の前の現実を理解できなかった。 「お父さん、最初からずーっと寝夢は私だよ。最後まで全然気が付かなかったね」 瞬時に頭が追いつかず「ネムハワタシダヨ」と聞こえてしまった。 「最初は偶然だった。あの時はまだ高校1年生で将来なんて全然考えてなかった。ただ、絵には多少自信があったからさ、いつかイラストレーターの仕事をしたいなーなんて漠然と考えてたの。すると、たまたまSNSで募集内容が流れてきて応募してみたんだ。でも、まさか募集者がお父さんだなんて全然思わなかったな。次第に関わり合うにつれお父さんだと確信した時、正体を打ち明けようか悩んだ。でも、結局黙っておくことにした。そっちの方がなんか楽しそうだなって思って」 全く気付かなかった。 「きっとお父さんは、寝夢の正体が私だと知ったら、接し方が変わると思ったの。だから黙っておくことにした。今回は原作最後のキャラクター公開ということで、カミングアウトしたんだけど・・・・・・」 「・・・・・・なるほど。そうだったのか」 「お父さん、本当は私にクノイチになって欲しかったんだよね?」 「昔はな」 「ごめんね、私はクノイチにはならない。でもお父さんやお母さんのような忍者はとても尊敬している。だから、その気持ちを大好きなイラストで表現したかったの」 「うん・・・・・・。咲楽には咲楽の人生があるし、それを尊重するのが親の使命だ。何よりもお父さんは咲楽が自分の力で成し遂げたことを誇りに思う。咲楽のおかげでクリプトニンジャがスタートして、色々な人と出会い、沢山の奇跡にも恵まれた。感謝してるよ、ありがとう」 それから僕たちは(世間的には)初対談を1時間ほど実施した。仕事モードであえて初共演感を出したが、リビングで話をしているような錯覚がした。 「イケバヤ先生、寝夢先生、ありがとうございました! それでは最後になりましたが、代表してイケバヤ先生ご挨拶をよろしくお願いいたします」 「はい。皆さま、ありがとうございました。楽しい時間はあっという間ですね。この後、いよいよ原作最後のキャラクターが公開されます。とはいえ、ご存知の様にクリプトニンジャは皆さんが勝手に二次商用していただいて構いません。つまり、この話をお聞きのあなた自身が何かを生み出す限り、クリプトニンジャは永久不滅です。解釈は自由です。あなたにしか出来ないあなただけのオリジナルコンテンツを心からお待ちしております。それでは、もっと世界中の方々から愛されるコンテンツになることをお祈りして・・・・・・原作最後のキャラクターです! どうぞー!」 「ヌォォォォ!!!!」 会場内外、どよめきが起こった。しばらくの間、拍手や歓声が留まることはなかった。  クリプトニンジャは世界中の誰もが知る巨大なキャラクターコンテンツとなった。日本は一時、少子高齢化、人口減少に伴いGDPが世界10位まで転落。誰もが絶望的な暗い気持ちになっていたあの頃、クリプトニンジャによって、不死鳥の如く経済復活を遂げた。また、クリプトニンジャをキッカケに世界中から忍者志望者が増えているという・・・・・・。 そして、原作最後のキャラクターを主人公とした小説がとある覆面作家により出版され、再びあの二人が伝説を巻き起こすのだが、それはまだ誰も知らない物語。
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