第四章

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ーシャオランサイドー その頃、シャオランは岩陰に隠れていた。本当は二人を助けたいのだが、恐怖で足がすくんでいた。 どうしよう、このままでは二人がやられちゃう。だけど私が行っても足手まといになりかねない・・・・・・。不安と恐怖で一杯なシャオランを見ていたリーリーは突然、岩陰から出始めた。 「あっ、リーリー。そっちは危ない」 リーリーはお構いなしに巨大タコの前まで移動した。そして、開口一番こんな言葉を相手に投げかけた。 「やいやいお前さん。その二人を解放しておくれ。さもなくば、おいらのスーパーパンダパンチをお見舞いするからな!」 巨大タコは完全に無視をした。それはそうだろう、あまりにも体格差がありすぎる。見えなくても感じ取れるのだろう。 「無視するなんて酷すぎる! もう頭にきた。いでよ、おいらのスーパーパンダパーンチ!」 リーリーは腕をブンブン回した。 ダメ!あいつは体温を感知できる、シャオランが思った通り、巨大タコはリーリーを攻撃し吹っ飛んだ。 「リーリー!」 シャオランは急いで駆け寄った。かなり負傷したみたいだ。 「おや? まだ誰かいたのか。コソコソ隠れておって。だが、今の今まで現れなかったってことは相当なビビリらしいな。見えなくても分かるぞ」 いよいよシャオランも見つかってしまった。 「そうだ、ビビリな貴様へのプレゼントとして友達をひねり潰してやろう。泣き叫ぶ姿を見れないのは残念だが、頭の中で想像するだけで興奮するわい! ハハハハハ」 握力が増し、咲耶とネムが苦しそうな表情を浮かべた。 「では、まずは貴様からだ。あの忌々しい爺さんの孫め!」 しかし、遂に耐えきれなくなったシャオランは勝手に口が開いた。 「や、や、やめてくださいぃぃぃ!」 すると突然、シャオランが白く光り始めた。眩い光が洞窟内を照らした。 「うっ、眩しい」 咲耶とネムはつい目を逸らした。 様子を伺いながら徐々に目を開くと、そこには謎の白髪女性が立っていた。 「誰だ、あれ?」 いや、違う。あれはシャオランだ。髪や雰囲気が違うせいか瞬時に気付かなかった。 「シャオラン・・・・・・?」 咲耶とネムは驚きを隠せない。 「例の力っていうのはこれか・・・・・・」 白髪のシャオランが独り言を呟いた。 「こんばんは巨大タコさん。いい加減そろそろ二人を解放していただけませんか? 言うこと聞かないならあなたの足切り落としますよ?」 「ふん。笑わせるな。何か一瞬体温が上がったが、どうせ貴様みたいなビビリな奴は何もできな・・・・・・」 ドサッ! 何が起きたのだろう。気がつけば咲耶とネムを捉えていた足がニ本切り落とされていた。 「うわぁぁぁぁぁ! いてぇぇぇぇぇ!」 巨大タコは痛さで悲鳴をあげている。 「あのー、話を聞いてませんでしたか? 同じ話はもうしないので一度でちゃんと覚えてくださいね」 巨大タコはシャオランの強さに完全に青ざめている。 「お二人ともお怪我はありませんか?」 「うん・・・・・・大丈夫。ところで、本当にシャオランなの?」 「はい、そうですよ。いつものシャオランです。ただ、少しだけギアを上げてますけど」 シャオランは二人に優しく微笑んだ。だが、次の瞬間には冷酷な目線を巨大タコに向けた。 「今晩はタコ料理にしようと思います。食材になる準備はよろしいですか?」 シャオランは閃光の如く駆け回り、巨大タコの足を五本切り落とした。敵は完全に言葉を失っていた。 「さてと、あと残り一本ですね。咲耶さん、ネムさん、後はお任せくだ・・・・・・」 すると突然、シャオランが呻き声を上げた。 「うわぁぁぁぁ!」 先程と同様に光り始めた。違うのは白髪が徐々にオレンジ色に変色していく。いつものシャオランに戻ってしまった。 「シャオラン!」 咲耶とネムはシャオランに駆け寄った。 「あんた、大丈夫?」 「咲耶さん、ネムさん・・・・・・私は一体?」 どうやら記憶が無いみたいだ。いつものシャオランがそこにはいた。 「シャオラン、ごめんね。疲れたかもしれないけど、まだ戦えそう?」 「そうですね・・・・・・怖いですけど、きっともうすぐ最後だと思うので頑張ります」 「ありがとう、シャオラン! だいぶ敵は弱っている。 「ネム、シャオラン、最後は三人の合体技で倒そう。タコの弱点は真水。おそらくあいつは水遁の術で倒せるはず!」 「OK!」 一斉に水遁の印を結んだ。 一方、巨大タコは足先から毒を吐き出し始めた。 「俺様としたことが、ちょっとビビっちまったわい。奴らめ、最後の悪あがきをしようとしてるな。だが、俺様の最後の足を使って必ずトドメを刺してやる!」 両者、一斉に攻撃した。 「ポイズンアタック!」 「水遁の術! 砂糖水バージョン!」 「水遁の術! 普通の水道水バージョン!」 「水遁の術! 昨日のお風呂の残り湯バージョン!」 正直、何が効くか不明だったので思いつく限り様々な水をぶっかけた。 やはり合体技は強力なのだろう。さすがに巨大タコの攻撃は咲耶たちに届かなかった。 「うわぁぁぁぁぁぁ!」 巨大タコはどんどん体が縮小し、そして目の前でバンと消滅した。 「やったー! 倒したー!」 三人は喜びあった。 すぐそばに論文があった。びしょびしょに濡れているが特に問題はないようだ。 「あー良かった。何も破れてなさそう。乾かせば問題ないと思う!」 「もうクタクタだね」 「疲れたー」 「早く、おじいちゃんの家まで帰ろう」 こうして三人はなんとか出口を発見し、無事岩爺の家に到着した。 それにしても何だったのだろう、あのシャオランの強さは・・・・・・? 帰り際、咲耶はシャオランの横顔をじっと見つめた。
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