第四章

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帰宅して早速、咲耶は岩爺に論文を渡した。 「おじいちゃん、あったよ」 「うむ、ありがとう。どうやら本物のようじゃの。これで全て回収完了じゃ」 岩爺は保管していた八枚の論文を机に並べ、九枚目の論文を最後に揃えた。光る訳でもない。だが、何かとてつもなく大きな力がそこに宿ったことを全員が肌で感じた。 「お主ら、よく頑張ったな。約束通り何でも願いを叶えてもよいぞ」 三人とも目を見合わせた。するとネムは咲耶に向かって話し出した。 「リーダーはあんただよ。部を代表してお願い」 シャオランも頷く。 「うーん、願いか・・・・・・」 咲耶は数分間、目を閉じ、腕を組みながらジーッと考えた。そして、答えを見つけ出したのか突然目を開け始めた。 「・・・・・・それなんだけどさ。おじいちゃん、願いは別にいいや!」 三人は驚いた。 「本当に良いのか? 今すぐアイドルになれるかもしれないのじゃぞ?」 「うーん・・・・・・確かに一瞬、頭によぎったのは認める。でもなんだろう。今は自分の道は自分で切り開きたいかな。それを今回の論文探検で学んだの」 三人は黙って昨夜の話に耳を傾けている。 「本当に大変だったけど、その分やり甲斐があったし楽しかった! だから仮にアイドルに今すぐなれたとしても、それって自分の力でなし得てないじゃない? 単純に面白くなさそうだなって思ったの。だから、おじいちゃん、この論文は預かっておいて」 他の二人も納得した表情で咲耶を見つめている。 「・・・・・・ハハハ!」 突然、岩爺は笑い出した。 「よく自分の欲を断ち切ることに成功したの。気持ちはよーく分かった。この論文はワシが厳重に保管しておこう。ところでじゃがの・・・・・・」 岩爺は何か含みを持たせる言い方をし始めた。 「実は、この伝説の忍術は発明したサトシ自身でしか発動できないんじゃ。ワシを含め全員な。つまり、どんな願いも叶えることは不可能なのじゃ。」 「えーそんなバカな!」 「騙して悪かったの。咲耶たちがサトシの謎を追う姿を見て、無性に鍛えたくなったのじゃ。ちなみに3人が倒した巨大タコ、あれはワシが生み出した幻影じゃ」 「えー! じゃあ全部おじいちゃんの仕業だってこと? もう信じられない!」 「ハハハハハ。怖い思いをさせてすまなかったの。褒美にワシが持つビットコインをそれぞれ一つずつあげるから、許してくれ」 「えっ? ということは、まさかの一ビットコイン?」 三人は揃ってスマホのウォレットを確認した。 「えーっと。一、十、百、千、万・・・・・・」 現実味が全くない額が表示されて、三人とも全員引いてしまった。 「そういえば結局、論文は見つかったけど、サトシの正体は分からなかったね」 「そうだねー。だけど、まだまだ部活もスタートしたばかりだし、焦らずゆっくり調べようよ」 「あっ、私さ洞窟で奇妙な壁画を見つけたんだ。もしかしたらサトシに繋がるヒントなのかも」 「ナイスネム! じゃあ明日は部室で壁画の解読をしよう!」 「おぉー!!!」 三人はそれぞれ帰路に着いた。 「それにしてもあのシャオランの姿、まさかの・・・・・・」 岩爺は一人、シャオランの後ろ姿を眺めていた。
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