雪の思い出

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 ずっと昔、お婆の子供の頃のことです。当時は今ほど交通の便も良くなく、長距離電話は高額で、掛ける時は黒電話の横に時計を置いて、掛けておりました。  勿論ネットもメールもアプリも無く、手紙が楽しみな時代でもありました。  社宅では、父と同世代の方々が、研修に出ておりました。母と仲の良い奥様達が、ご主人の単身赴任先に遊びに行かれて、沢山のお土産話と写真と一緒に、珍しいお土産をくださるたびに、母も父にはいつお声が掛かるかと、心待ちに致しておりました。  そんな時ついに父も、一年間の研修を命ぜられました。母もワクワクしておりました。私達(私と弟)の学校さえ無ければ、ついて行きたかっのだと思います。  研修先は相当な雪国でした。  母は心配して、毛布のような肌着やモコモコ綿の入った上着などを、買い込んで参りました。  父は 「そんなの向こうで買った方が、良い物が沢山あるって」 と、笑いながらもパンパンになった荷物を持って、出発致しました。
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