卯月   始まりの入学式

3/6
前へ
/9ページ
次へ
 ああもういいや。素を全開にしてやろう。  何を隠そう、私は腐男子だ。それも会長受けを主食とした雑食。優れたSが優れたMであるように、圧倒的な攻め様は圧倒的な受け様でもあるという宗派の者だ。俺様受け、大好きである。  また、学園にあるナマモノの全ジャンルで同人誌を出したレベルの狂人(くるんちゅ)である。  なんならさっき話した清水 御幸という名も、神子の愛し子であるという話も、全て嘘である。  今の、次縹色(つぎはなだいろ)の切れ長の瞳に薄花色(うすはないろ)で、触覚は藍色の、腰上程のストレートの髪をポニーテールにして、アンダーリムのシンプルな眼鏡をかけた容姿も、いろいろ偽っている。  そもそも、私は人間ですらない。  ……少し長くなるが、学園について、私について、先程の声について、そしてどうして今の状況になったかについて、お話ししようか。  この青藍学園は、小等部から高等部まであり、250年の歴史と高い偏差値を誇る、名門校である。  250年程前、種族関係なく才能ある者に高い水準の教育を施し、次世代を担う有能な者を育てようと、神子達が創ったの学園の一つである。  それぞれの属性につき、神子の趣味の分野に特化した、男女別の十八の学園と、趣味の分野の教育を受けるがあくまで普通科の、男女別の十八の学園、どの神子も平等に関わった完全な普通科な一つの学園、という構成である。  ここは水の神子が創った二つのうちの一つで、趣味である音楽の、高水準の教育を受ける、普通科の学園である。  種族関係なく、とあるように、さまざまな種族の生徒が在籍しているが、どうしても人間という種族は、他種族と比べ、身体能力で劣っていたり、魔力量で劣っていたりと、優秀かつ容姿端麗な生徒が選ばれる役職持ちに任命されにくい、ということも私が今新入生に注目を浴びている理由の一つである。  また、この学園は、いわゆるBLの王道学園というやつでもある。  生徒のうち、同性愛者(ゲイ)が一割、両性愛者(バイセクシュアル)が八割、異性愛者(ヘテロセクシュアル)が一割、というあるあるだ。  クラス分けは、成績優秀な順にS、A、B、C、D、Eクラス、成績関係無く素行が悪い生徒が所属するFクラスとなっている。ただ、特例として、高い成績を収める生徒は、Fクラスには入れられない。  まあ、クラスが上がるにつれて、人間の割合は減っていく。勉強は努力でなんとかなっても、成績には身体能力や魔法も入るため、どうしても上位に食い込みずらいのだ。  もう一つのあるあるとして、生徒会と風紀委員会の権力が強い。とても強い。権力が強い順に、理事会(理事長)<<生徒会=風紀委員会<<<<教師陣<<<他の委員会、という感じである。  ここまで長々と説明してきたが、私が注目される最たる理由は、容姿端麗なことでも、人間でありながら最高クラスであるSクラスに所属し、副会長の任に就いていることでも、神子の愛し子であることでもない。  私が、長い歴史を誇るこの学園で、史上初の入学試験オール満点の高等部編入生だからだ。まあ、当然なのだが。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

65人が本棚に入れています
本棚に追加