卯月   始まりの入学式

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 人間でも神子の愛し子でもない、となると、私の正体は一体なんなのだ、という話になる。  私は神子だ。  太陽系を創造した一柱(ひとり)の、変化を司る、水の狐の神子。名は美雪。  名前の読み方を同じにしたのは、呼ばれたときに万が一反応できない事態を防ぐためと、私たちをお創りになった敬愛する我が君がつけてくださった名で呼ばれたいからだ。  神子は、それぞれの属性の、この銀河を創造した大神様方によって創られている。  また、神子は、自分を創った大神様の狂信者である。  しょうがない。だって主様方が言葉にできないほど素晴らしいお方なのだから。 by神子たち  そして、先程の声こそ、私の半身であり、最愛である、水の桜の神子、清凪(せな)である。  最愛といっても、恋愛的な意味ではない。何せ、生まれてからずっと一緒にいるのだ。他の神子とももちろん仲はいいが、属性が違うため、お互いに理解し合えないところがどうしても出てくる。そのため、清凪は私の最大の理解者であり、その逆も然りなのだ。  ちなみに、これは他の神子にも当てはまる。  また、神子のどちらかが完全に滅ぶと、対の神子も共に滅ぶ。  生まれてから死ぬまで、ずっと共に過ごす、大切な大切な半身であり、もう一人の自分のような存在だ。  そのため、対の神子(私の場合は清凪)とは、とても重い愛情を抱き合っている。最早共依存、いや、狂依存の域である。  さて、それでは、わたしの正体についての話はここまでにして、何故神子の私が正体を隠して学園生活を送っているのか、についてお話しよう。  私は、今年のゴールデンウィーク後に入ってくる転入生のことで、神子代表として入学した。  詳しくは言えないが、私の大切な弟分が犠牲になっている。といっても、死んではいない、というか死なない未来になるように最善の世界へ導いてきたので、そこは安心してほしい。  その目的上、私の正体がバレるととてもマズイ事になるため、本物の私たちの愛し子に協力してもらい、あえて人間の、立場の弱い者に偽装しているのだ。立場が弱いといえど、マトモな奴はバックに神子がいるヤツに危害を加えたら報復される危険性を考えるのだが、この世には、話が通じなかったり、思い込みがとんでもなく激しかったりするやべぇ奴がいるのである。  私は人間という体であること、後ろ盾が神子以外ないパンピー出身であることから、家柄や強い種族主義の奴らに蛇蝎のごとく嫌われている。  それはまあいいのだが、頼むから嫌がらせをするのは辞めてほしい。親衛隊や清凪を抑えるのがクッソ大変なんだ…。
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