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数分後、街の中心部(自然派インテリアがいい感じのカフェ)では――。
「おいニンジャ、何だこれは!?」
「何って、自分で注文したパンケーキじゃない」
「そういうことじゃない。何だこのフワッとしたパンケーキ! 何だこのきめ細かいホイップ! 実物がメニューの写真を軽々超えてくるなんて、信じられない!」
「大げさだなぁ。でも、ここをオススメした理由、分かるでしょ?」
その頃公園では――。
「ちょっと、離れてよ」
「嫌アル。雷で攻撃したらいいネ」
サンドラの腰に背後からムギュッと抱きついたシャオランは、呼吸を整えながら言った。ここまで得意の太極拳で応戦してきたが、雷を回避しつつ――時に感電しつつ――の戦いは、体力の消耗が激しい。そこで、ひらめいた。
くっついていれば、相手も感電に巻き込める。サンドラもノーダメージで済む訳ではないようだし、痛いのを我慢して耐久勝負に持ち込めばいい。それに。
「リーリー、今がチャンスアル!」
シャオランの呼びかけに、相棒のパンダが鼻息を鳴らす。抑え込んでいる内にと、リーリーが突進を始めた。手を叩くサンドラ。雷を避けるリーリー。
その時だった。
バン!
前触れのない青い稲妻が、リーリーの体に直撃した。
「当たったわ!」
「リーリー!」
頭の中が真っ白になった。シャオランは急いで愛する相棒の下に駆け寄る。
「今のはフューチャーライトニング。少しやんちゃだけど、数分先の未来に落とせる雷ちゃんよ」
得意げなサンドラの声が耳を素通りする。手のひらサイズの小さな体に戻ったリーリーは、ぐったりしていた。背中の白い毛は一部焼け焦げている。小刻みに震える温かい後ろ足に、シャオランはそっと手を添えた。
ポンッ、と口寄せした相棒の姿が消えると、シャオランは立ち上がった。ゆらり、と振り向く。目には涙がにじんでいた。
「……絶対許さない。地獄に送ってやる」
今までの彼女とは似ても似つかない、腹の底からの低く抑えた声が、周囲の空気を凍てつかせた。
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