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二の巻
飛行機が降りたのは――墜落ではないと信じたい――北甲賀総合公園だった。
咲耶と、咲耶を追いかけてきた二人は、公園の芝生の広場をキョロキョロと見回した。特に変わった様子はない。目に優しい緑が広がっていて、あちらにはボール遊びをしている親子、あちらでは虫かごをぶら下げた小学生達。
「あっちかも」
ケモ耳をピンと立てたネムが先導する。様々な種類の木の横を通っていくと、高い金網のフェンスと小さな人だかりに行き当たった。
フェンスの向こう側には、人気のない野球のグラウンド。中央に例のGAL機がある。その数人乗りの飛行機のドアが、ジワーと焦らすように開いた。ハラリと短い縄ばしごが下りる。
『やれやれ。今回は外れなんじゃないか、キース?』
『ま、試すだけ試してみようぜ』
『誰から行く?』
そんな微かな会話の後――忍者は耳も鍛えるのだ――、男性が、続けて女性が降りてきた。二人がクルリと振り返ったのと同時に、ドアから三人目が現れた。
彼は縄ばしごを使わなかった。それどころか、手足を動かすことすらしなかった。その白人男性は、まるでボールがスローモーションで放物線を描くかのように、ラフなTシャツに包まれた丸い体を皆の前に静かに着地させたのだ。その存在感に目が釘づけになってしまう。ニヤリ、と彼が笑った。
「ベースボール場か。実に我々向きだな。さて、早速だが、お集まりの諸君の中にニンジャか、ニンジャに詳しい者は――」
「ハイハイハーイ!」
反射的に咲耶は右手を挙げていた。考えることなく、数メートルあるフェンスをシャカシャカと登って、「たぁっ」と一回転して飛び降りる。決まった。みんなの視線が集中するのが気持ちいい。
「ニンジャ、すごっ」
と女性。
「やるなキース。また的中だ」
「お安いご用」
と男性。
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