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ノリの悪いシャオランとネムが、正規の入口から地味に入場して、しぶしぶといった感じで合流したところで、太った白人男性が一つ頷いた。近くで見ると意外と若そうだ。オシャレのつもりなのか、金髪の前髪を半分だけ下ろしている。
「ニンジャガール、まずは自己紹介といこうか。ボクはボムだ」
「オレはキース」
ラテン系の彼は、アロハなシャツを妙にかっこよく着こなしていた。額にはアイマスク。
「サンドラよ」
ブルーの長髪の少女で、キラキラした黒いTシャツからはおへそが覗いている。
「そしてボク達は――」
「ギャル?」
ネムが言うと、ボムは「ギャアル」と発音を訂正した。
「グレートアメリカ同盟の頭文字だ、覚えておけ。全く、二度もボクの発言が遮られるなんて、一体どうなって――」
「あのー、写真撮ってもいいですか? あ、アタシ咲耶です」
しゃべるより先に、咲耶は既に自撮り棒をスタンバイしていた。謎の飛行機に謎の一味、こんな美味しいネタを逃すなんてもったいない。ぜひネットにアップしなくては。
「……いいだろう、ボクは寛容だからな。おいお前ら、写真――」
「写真? ダメ! 今そばかす隠せてないの。キース、あなたのアイマスク貸してよ!」
「待て待て、どうやって使う気だサンドラ? 上級者向けファッションになっちまっていいのか?」
「どいつもこいつも……」
「行きますよー」
パシャリ。ついでにもう一枚パシャリ。
後ろの方でワチャワチャしている人はいたが、飛行機の『GAL』までちゃんと入っていたし、何より自分の写真写りがバッチリだ。シャオランとネムは慣れているからか、しっかりカメラ目線で、咲耶はクスッと微笑んだ。
が、サンドラは不満だったらしい。あーだこーだと言われつつ、仕方なく彼女のそばかすをアプリで加工する。その間、シャオランのこんな言葉が聞こえてきた。
「皆さん、アメリカから来たんですよネ? 何で日本語話せるアル? あ、私はシャオランアル」
「それは、首にこの最新鋭の翻訳機をつけてるからだな。MI6の特製だ」
「MITだ、ボブ。勝手に外国製にするな」
「どっちでもいいさ。あと、ボブじゃなくてボムな?」
言われてみれば、全員お揃いの黒い首輪をつけている。ただし、ボム――本名はボブなのか――のは二重あごでほとんど見えない。
他にも、この飛行機は国から支給されたとか、でも燃料はケチられたとか、気になる話がどんどん出てくる。咲耶は写真編集を切り上げた。目がシバシバしてきたし、この辺で許してほしい。
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