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「ところで、三人は何しに日本へ? 忍者を探してたみたいですけど……」
スマホをしまいながら尋ねると、GALのメンバーは顔を見合わせた。
「……そうそう、ニンジャ。ボクらの国にもクールな噂が届いてさ」
「それはどうも。あ、ウチはネム」
ペコッと頭を下げながらも、ネムはわずかに後ずさりした。彼女だけではなく、咲耶も、シャオランも。忍び的な勘とでもいうのか、空気が変わったのを感じたのだ。
「国防総省で調べがついてる。この国のニンジャはクリプトナイ……とかいう、極秘アイテムを持ってるそうじゃないか」
「クリプト絵巻よ、ボブ。スーパーパワーをもたらす極秘ファイルだって、彼ら口癖みたいに言ってたわ」
「!」
忍者達が一斉に息を呑む。
「どっちでもいいさ」
ボム、いやボブが一歩動こうとした瞬間、サクッ、と彼の足元に一本のくないが刺さった。投げ終えたままの体勢で、咲耶は大きく息を吸う。
「これは警告!」
「ほう?」
(ダメかぁ)
ニヤリとするボブに動揺の気配はない。暗号絵巻は甲賀シティの、日本の命運を大きく変えるだけの力を持っている。ここで引いてほしいと思って強く出たのだが、彼はやはり普通の人間ではないようだ。咲耶の首筋に冷や汗が流れた。
ツンツン、とネムが腕をつついてきた。
『さすがにヤバいって。岩爺様呼んだ方がよくない?』
ヒソヒソ声。岩爺は咲耶達甲賀忍者の頭領で、咲耶の祖父でもあった。
『実は、おじいちゃん温泉旅行中で……』
『こんな時に何でいないアル?』
シャオランも加わる。ヒソヒソ、と咲耶。
『コンガさんは?』
コンガは頼れる先輩忍者で、ゴリラだ。
『バイトって言ってたヨ。今度はバーテンだって』
『えー、あの人何個バイトしてるの? ゴリラなのに!』
『ひとまず、連絡だけ飛ばすわー』
「打ち合わせは終わったか?」
「えっ? あ、あと十秒!」
咲耶は適当に言い繕った。その隙に、ネムが愛用の筆を取り出す。忍術・動植綵絵――サラサラサラ、と彼女が空中に小さな鳥の絵を描くと、それは瞬く間に実体化し四方へと飛び立った。これで岩爺や甲賀の皆に状況が伝わるはず。
「何か小細工をしたみたいだが……改めて聞こう。クリプト絵巻について、教えてくれる気はあるか?」
三人のくノ一は頷き合った。アメリカ人達に向き直って、咲耶は一言。
「教えない!」
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