二の巻

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「ところで、三人は何しに日本へ? 忍者を探してたみたいですけど……」  スマホをしまいながら尋ねると、GALのメンバーは顔を見合わせた。 「……そうそう、ニンジャ。ボクらの国にもクールな噂が届いてさ」 「それはどうも。あ、ウチはネム」  ペコッと頭を下げながらも、ネムはわずかに後ずさりした。彼女だけではなく、咲耶も、シャオランも。忍び的な勘とでもいうのか、空気が変わったのを感じたのだ。 「国防総省(ペンタゴン)で調べがついてる。この国のニンジャはクリプトナイ……とかいう、極秘アイテムを持ってるそうじゃないか」 「クリプト絵巻(ノート)よ、ボブ。スーパーパワーをもたらす極秘ファイルだって、彼ら口癖みたいに言ってたわ」 「!」  忍者達が一斉に息を呑む。 「どっちでもいいさ」  ボム、いやボブが一歩動こうとした瞬間、サクッ、と彼の足元に一本のくないが刺さった。投げ終えたままの体勢で、咲耶は大きく息を吸う。 「これは警告!」 「ほう?」 (ダメかぁ)  ニヤリとするボブに動揺の気配はない。暗号(クリプト)絵巻(えまき)は甲賀シティの、日本の命運を大きく変えるだけの力を持っている。ここで引いてほしいと思って強く出たのだが、彼はやはり普通の人間ではないようだ。咲耶の首筋に冷や汗が流れた。  ツンツン、とネムが腕をつついてきた。 『さすがにヤバいって。岩爺(がんじ)様呼んだ方がよくない?』  ヒソヒソ声。岩爺は咲耶達甲賀忍者の頭領で、咲耶の祖父でもあった。 『実は、おじいちゃん温泉旅行中で……』 『こんな時に何でいないアル?』  シャオランも加わる。ヒソヒソ、と咲耶。 『コンガさんは?』  コンガは頼れる先輩忍者で、ゴリラだ。 『バイトって言ってたヨ。今度はバーテンだって』 『えー、あの人何個バイトしてるの? ゴリラなのに!』 『ひとまず、連絡だけ飛ばすわー』 「打ち合わせは終わったか?」 「えっ? あ、あと十秒!」  咲耶は適当に言い繕った。その隙に、ネムが愛用の筆を取り出す。忍術・動植綵絵(さいえ)――サラサラサラ、と彼女が空中に小さな鳥の絵を描くと、それは瞬く間に実体化し四方へと飛び立った。これで岩爺や甲賀の皆に状況が伝わるはず。 「何か小細工をしたみたいだが……改めて聞こう。クリプト絵巻(ノート)について、教えてくれる気はあるか?」  三人のくノ一は頷き合った。アメリカ人達に向き直って、咲耶は一言。 「教えない!」  
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