第3夜「水面ちゃん」

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第3夜「水面ちゃん」

シエスタの営業はお昼から始まる。 これまでは僕と若菜ママとで開店準備をすることが 多かったのだが… 「おはよう、水面(みなも)ちゃん」 「おはよう…ございます、ユウくん」 オーナーの克己さんと若菜ママの元に養女として やってきた水面ちゃんが準備を手伝ってくれるように なったのだ。 (水面ちゃんのことはseason3・28.29話でね) 16歳の水面ちゃんは栄養失調で体が小さい上に 高校にも行かせてもらえてなかった。 学校に毎日通うのも難しい体力なのもあって スクーリングは月に一度の通信制の高校に通うことに なった。 「水面は勉強できるのよ〜。入試テストもほぼ満点 だったんだから」と笑う若菜ママの隣で 水面ちゃんは恥ずかしそうに微笑んだ。 「すごいね、水面ちゃん!」 「勉強…好きだから」と呟く水面ちゃんの髪を若菜ママは 優しく撫でながら 「これからは好きなことをいーっぱいしないとね、水面」 「ありがとう…若菜ママ」 どの親子よりもこの2人は親子になっていると 僕はつくづく思う。 血のつながりよりも信頼と慈しみの心が勝ることも あるんだと感じるんだ。 「ユウくん、教えて欲しいんだけど…」 「ん?何かな??」 「このメニューに合うオリジナルジュースは…?」 料理をどんどん覚えている水面ちゃんは、この頃 僕に飲み物のことをよく聞いてくるようになった。 20歳になったらカクテルのことも 知りたいのだそうだ。 「本当に水面ちゃんは勉強が好きなんだね」 「…うん。色々知ることが楽しいの」 「そっか…。了解。このメニューはトマトベースだから フルーツを使ったジュースが合うよ。例えば…」 大きな瞳を輝かせながらメモを取る水面ちゃんを かわいい妹のように思う僕なのだった。
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