バディ

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バディ

「あれ?」 まだそれほど高くない太陽の光の下に出た時、僕の右側をついて来ていたはずのバディがいないことに気づいた。 さっきまで…あの清浄の泉を越える前には一緒だった。 はぐれたとしたらきっとそこだ。 大丈夫。 前にも何度かあったじゃないか。 来た道を辿って、ゆっくり探せば大丈夫… 僕は不安を押し殺して自分の軌跡を辿った。 いない。 もしかしたら僕たちの傷を軽減してくれるあのふわふわしたネットみたいな保護膜の山に隠れているんじゃないかと思ったけど、僕と同じ姿をした君はいなかった。 不安に焦りが重なる。 やっぱり清浄の泉まで戻ろう。 一日に一度か二度、突然水を湛える清浄の泉は、ほんの数分の出来事だというのにもう枯れていた。 湖底にいるかもしれない大事な僕の片割れの姿は見えなかった。 やだよ… どこなの… 僕は半べそになった。 だってこのまま会えなかった仲間だって大勢いるんだ。 用済みとばかりに暗い“廃棄所”に打ち捨てられた仲間を何人も見て来た。 僕たちは同じ姿をしたバディとの絆が強い。 廃棄所送りになった仲間を見つけたバディは、みんな大体後を追ってしまうんだ。 僕も、君がいないなら… 「…るよ…」 声が聞こえた。 近くにいる! どこ、どこにいるの? 「勝手に殺さないでよ…僕まだいるよ…ちょっと汚いけど」 僕は声を頼りにバディを探した。 いた。 いたよ。 ちょっと顔に汚れがついてるけど、バディは選定所の片隅で丸くなって座っていた。 「大丈夫? どこか怪我してない?」 「僕はまだ元気だよ。泉が満ちるのは明日か…ごめん、清浄の泉を越えないことには一緒には行けない」 「わかってるよ…わかってるけど、絶対明日会える?」 「うん、大丈夫。絶対行くから。だから先に行ってて。ほら、こんなとこにいたらまた穢れるよ?」 「待ってるよ…」 僕らは笑い合うと、一日だけのお別れに手を振った。 大丈夫だよね。 明日になったら会えるよね。 間違って廃棄所送りなんてならないよね… 不安が完全に消えたわけじゃないけど、僕はまた泉を越えたものが集う太陽の下に戻った。 明日が待ち遠しかった。 ※靴下片方洗い忘れた
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