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「草!草なの?!」
「お兄ちゃん!お兄ちゃんなの?!」
どうやら隣にいる銀髪の赤ちゃんは私の弟の草らしい。
私の弟の草は確か黒髪だったはず。
でも今は、ぼんやりとしか見えないけれども 銀髪の目が赤い赤ちゃんだった。
「どうなっているの?」
「お兄ちゃん!その姿は一体何?」
「草こそ!
…まさか、私たち異世界転生ってやつをしてしまったの?」
観光客がゴミ箱に捨てて行った漫画を見たことがある。
何かの事故や病気で死んでしまったら、不思議な世界に生まれ変わるという漫画のお話。
生まれ変わったら容姿が変わっている漫画もあった。
銀髪の可愛い赤ちゃん…
私の見た目はどうなんだろう…。
元の私たちは南国の小さな観光名所の島の、周りのみんなと同じ浅黒い肌に黒髪の普通の男の子だった。
草と私はお父さんが違う。
お母さんは知らないおじさんと一緒にデートするのがお仕事だった。
私はお父さんを知らない。
草のお父さんも知らない。
だけどお母さんは知っていた。
いつもご飯をテーブルに残してお母さんはお仕事に行ってしまっていた。
寂しかったけど私には草がいたから平気だった。
一度島の子供達に私たちの名前をからかわれたことがある。
私の名前は 石。
弟の名前は 草。
お前らは親に愛されていないって言われてからかわれた。
出生届というものを出されていないから学校にも通えないみたい。
それでも私は草の面倒を見なければいけなかったからそんな子供たちの言うことなんて気にしなかった。
今思えば…私はお母さんに愛されてなかったのだろう。
弟の草もお母さんに愛されていなかったのだろう。
「もうダメ…お兄ちゃん…眠い」
「…私も…」
急激に襲ってきた 睡魔の中、私は神様に祈る。
神様…もしも本当に私たちが異世界転生をしていたなら…今度こそはお父さんとお母さんに愛されますように…
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