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「うーん」
今のお母さんの勢いでとなりで眠っていた草が声を上げ、目を覚ました。
「え?お兄ちゃん?!」
「そうだよ 草。草のお兄ちゃんの石だよ。
私たち本当に異世界転生したみたいだよ!」
「えっ?!ウッソ……やった!
神様はいたんだ!
神様!ありがとうございます!!」
草…クロスは私の手をぎゅっと握り、涙を流しながら笑顔でそう神様に感謝する。
「えっと…君たちは異世界転生って言うけど…前はどこに住んでいたの?」
お母さんの問いかけに 私は一生懸命 思い出す。
「地球っていう星の…南の島です」
「地球?!」
お母さんはすごく驚いていた。
「…もっと詳しく聞かせて。
どうして死んじゃったの?
前世での両親は?」
「島にハリケーンが来て…裏山が崩れてお家を土砂崩れが襲ってきて死んじゃったんです。
お母さんは観光で訪れる男の人とホテルに行くのが仕事でした。
お父さんは分かりません。
でも、私と 草…クロスのお父さんは違うって言ってました。
…私たちが死んじゃうちょっと前ははお金持ちのおじさんと一緒に日本という国に行くと言っていました」
あれ…なんだか涙が出てきた。
お母さんの手が伸びてきて、私の涙をそっと拭ってくれた。
そして、
「つらかったね…母親から虐待されて育ったのかな…
アルグ、クロス。これからは私が愛してあげる。 私があなたたちのお母さんよ」
と言って抱きしめてくれた。
「お母さん…」
クロスがお母さんをそう呼ぶと、お母さんは クロス のおでこにキスをして
「そうよ。私がお母さん、ヴァンパイアのグロリオーサ。
このオフロ…オッド・フロンティア1の武器鍛冶職人、グロリオーサよ」
と名乗り、私のおでこにもキスをしてくれた。
「前のお母さん…とっても怖かった。 名前も…草って…とっても嫌な名前だった。
出生届とか出してないから、学校にも通えなかった。
同じ年頃の子供たちには名前のことでからかわれた。
お前たちは望まれて生まれた子供じゃないって…」
草は…クロス はそう言うとうわーんと泣き出した。
すると お母さんは優しく私たちの頭を撫で
「大丈夫。私もベロニカも…あなたたちのお父さんもあなたたちを望んで作ったの。
ねえ、あなたたちは何歳で死んじゃったの?」
と優しい声で聞いてくれる。
「えーと…私が7歳で、クロスは5歳だったはず」
「そんな小さな時にとっても辛い思いをして死んじゃっただなんて…。
安心して。 これからはずっと 私とベロニカがあなたたちを愛してあげる。 大切にしてあげる。
だから、笑って?私はあなたたちの笑顔が見たいな」
お母さんの優しい言葉と抱擁に…笑顔で笑いたいのに涙と泣き声しか出せなかった。
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