ゆきがっせん、ゆきがっせん。

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 まだ一か月半程度の付き合いだったけれど、この時は既に俺は彼の性格がおおよそわかってきたところだった。  正直、結構な我儘、だったんだよな。  例えば地域のクリスマスイベントで、クリスマスツリーにみんなで飾り付けをするようなものを小学校で開催したんだけど。その時は一番上の星は自分がつけるんだ、って言って聞かなかった。他の子がつけたがっていたのを強引に奪い取ってしまったっていうか。  しかも、藤之助から星飾りを奪い返そうとした子が転んですりむいちゃったら、ざまあみろ!ってかんじで大笑いするんだよ。まあ、周りはドン引きするじゃん?  他にも、自分が忘れ物をしたからって、通学班全員に引き返せって命令したりとか。  逆に遅刻したやつのことは置いていけって繰り返し要求して、しまいには駄々をこねたりとか。  性格的に結構アレ、なのはみんなも知っての通りで。俺は“家から絶縁されるほど我儘言うってどんだけだよ”って正直顔をひきつらせてたんだけども。 ――それは非常識だつったら、またキレて面倒になるんだろうな。  俺は苦笑いして流すことにした。天気予報と違ってるのになんでそんなに自信満々なんだよ、と心の中だけでツッコミつつ。 「寒くなるから、一月のうちに雪も降るはずさ。ぼく、寒い方が好きだし、雪も大好きだから降ってほしくって。パパとママに、雪が降らせてくれるようにってお願いしたんだよ。そうしたら、かわいいかわいいトウちゃんの頼みだからって聞いてくれたってわけ!」  何やらとんでもないことを言っているような気がする。両親にお願いしたら雪が降るって、まるで魔法使いではないか。 「ふ、ふうん。藤之助のパパとママ、凄いんだな。魔法使いのようなものなのか?」  あるいは、何かヤバイ宗教でも信じているのではなかろうか。そんな心の声を隠しつつ言うと、彼は満足したように胸を張ってみせたのだった。 「そうだよ。でも魔法使いよりずーっとすごいんだ!ぼく、今年は雪合戦がしたくて。レイくんはかしこいし優しいから、遊ぶ時は誘ってあげるね!」
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