ゆきがっせん、ゆきがっせん。

4/5
前へ
/5ページ
次へ
 ***  で、どうなったかというと。  本当に降ったのだ、雪が。暖冬で今年は首都圏に雪が降ることはないだろうって言われていたっていうのに。  しかも奇妙なことに、神奈川のほんの一部だけピンポイントで降った形。それも、雪合戦ができそうなくらいに積もったのだから驚きだ。テレビでは異常気象、まず見る事がない不思議な現象って大騒ぎになっていた。  当たったのは偶然なのか、それとも本当に藤之助の両親が何かの儀式でもしたといのか。  厄介だったのは、藤之助にとって俺は“自分を否定しない、都合の良い友達”であっただろうということ。雪が積もったので雪合戦をしよう、と真っ先に誘ってきたのだった。  もちろん、雪合戦は少人数では難しい。マンションに住んでいた他の小学生の子も誘った。その中には藤之助の我儘な性格を知っているから渋った者も少なからずいたが、やっぱり久しぶりに降った雪の魅力に勝てなかったんだと思う。最終的には、マンションにいた子供達と、保護者の大人数名が参加する大きな雪合戦になったのだった。  ルールはとってもシンプル。二チームに分かれて、雪玉を当てられた子が退場。先に相手チームを全滅させた方が勝ち、というもの。  万が一藤之助の敵チームになったらわざと負けた方がいいかもしれない、とその時はやや本気で思っていた。万が一自分が負けたら、藤之助が面倒な駄々をこねだすことが見えていたからだ。  しかし幸いな時に、俺は藤之助と同じチームで。全力で相手を叩きつぶせばそれでいい、ということになったのだった。 「うおおおおおおおおおおおおお!」 「当たれ当たれ当たれ当たれ!」 「まっけるもんかあああああああああああああ!」 「とりゃあああああああああああああ!」  ゲームは、最初は順調に進んでいた。しかし途中で、相手チームの四年生の女の子が声を上げたのである。 「ズルい!さっきから藤之助くん、当たっても退場しないじゃん!誤魔化してる!!」  それは、俺も薄々気づいていたことだった。でも藤之助の機嫌を損ねるのが面倒で、見て見ぬふりをしていたのである。多分他の子もそうだったのだろう。  でも、彼女にはどうしても許せなかったらしい。正義感が強くて勝気な子だった。元々苛立ちを覚えてはいたんだろう、ここぞとばかりに藤之助の我儘なところ、傲慢なところを上げ連ねて糾弾してしまったんだ。  藤之助くんは、すぐに不機嫌になった。  そして。 「ぼくは生まれつき、雪の王様なんだ。だからニンゲンの雪玉になんか当たらないんだ。嘘ばっかりつくな。なんだよお前、偉そうに。せっかく遊びに誘ってやったのに」  とんでもない言葉を放った。 「お前なんか、氷漬けになって死んじゃえばいいんだ。お前みたいな傲慢なやつ、要らない」
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加