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ゆきがっせん、ゆきがっせん。
雪の思い出、なあ。
ああ、言ったことなかったっけ。俺、冬ってあんまり好きじゃないっていうか、雪が得意じゃないというか。
嫌いっていうのとは違う。ただ、嫌なこと思い出して苦手っていうか、ちょっとびびるっていうか。
……え、何、そんなに気になる?
正直、エイくんの作文のお題にするにはその……結構ヤバイ話なんだけどそんなに知りたい?まったく参考にならないよ?
ああ、うん……そこまで言うなら仕方ない、話す。
兄ちゃんがまだ、エイくんと同じくらいの年の頃。
つまり小学生だった頃のことだ。そうとも、当たり前だけどな、今はこんなにでっかい俺にだって、エイくんくらいちっちゃな時があったんだからな?え、ちっちゃいって言うなって?ばーか、俺からすりゃお前はまだまだ小さいんだっつの。
小学三年生の、冬……だったと思う。
ああ、エイくんは知らないだろうけど、十年くらい前は俺達別のマンションに暮らしてたんだよ。最寄りがH駅でさ、少しボロっちい賃貸マンションだったんだけど。
そのマンションには駐輪場があって、よく子供の遊び場になってたわけ。ああ、今俺達が住んでるマンションの駐輪場みたいなかんじじゃないぞ?自転車が並んでるスペース以外に、子供がちょっと雪合戦するくらいの場所があったんだ。
引っ越し前に住んでいたのは神奈川県だった。俺達が今住んでる東京と同じくらい、そんなに雪が降らないところだな。親父の転勤があって、みんなで東京に引っ越してきて、ついでにマンションも買って今に至るわけだけど。
賃貸マンションだから、結構住人の入れ替わりが激しくて。
俺が三年生の時の冬、同い年の男の子とその家族が引っ越してきたんだ。
「初めまして、ぼく、高宿藤之助って言います。藤之助って気軽に呼んでください」
「あ、うん。初めまして。どうも」
彼が両親と一緒に挨拶しに来た日のことは、今でもよく覚えてるよ。
なんだか妙に古風な名前だな、って思ったことも。
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