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私も今井君も五年前に結婚をしていて、今井君には二歳の娘がいた。 私の夫は二年前に海外転勤を命じられて、アメリカにいる。 私たちは「とても信頼し合った同僚」で、もしかしたら「男女の垣根を越えた友達」だった。 今井君が退職を決めたのは、身体が弱く子育てがままならない奥さんのために、奥さんの実家近くで住むためだそうだ。 今井君は奥さんの話も私にたくさんした。 奥さんとは高校時代からの付き合いと聞いて私は驚いたし、感情的で行動派な今井君とは真逆でゆったりとした人だと知った。 「私と今井君は同じタイプで、奥さんと今井君は反対のタイプなんだね」 ランチに行った会社の近くの洋食店で私がそう言うと、今井君は口いっぱいに入れたエビフライをもぐもぐ飲み込んでから口を開く。 「本当にそれ。僕たち似ているよね」 三つも年下なのに今井君はいつの間にか私に敬語を使わなくなった。 「でも桜井さんたち二人も逆のタイプなんでしょ?」 「二人?…あっ私と夫も逆だ。私が行動派で、旦那さんが受け入れてくれる感じかな」 包容力があって穏やかなところが私の夫の良いところだ。 「そういう組み合わせじゃないと長くは続かないよ」 今井君は口元をきれいにハンカチで拭う。今井君はいつもアイロンのかかったハンカチを持っていて、それは奥さんの影響だろうか。 私はじっとそのハンカチを見てしまう。
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