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何でもいいとは言ったけど!
とある北国の小学校。
ここでは、冬になると特別な図工の授業を行うことになっている。雪の中外に出て、みんなで雪の彫刻を作ろうというものだ。
いかんせん北国であり、十二月から二月にかけては雪が積もっていない日の方が少ない。材料は山ほどある。普通の雪だるまを作るのもよし、魔法少女を作るのもよし、ドラえもんを作るのもよし。
先生である私の仕事は、生徒の意思を尊重し、彼等が安全に雪の彫刻を作れるように見守ることだ。
「皆さん、彫刻を作る時は、くれぐれも怪我をしないように気を付けて頂戴ね!」
「はーい!」
元気よく返事をする子供達。ふと、一人の女の子がトコトコと近づいてきた。
ツインテールが可愛い、トーコちゃんだ。彼女は私を見上げると、あの先生、と尋ねてきたのだった。
「雪の彫刻……何を作ってもいいの?」
彼女はもじもじしながら言う。
「私……私、作ってあげたい子がいるの。いつもみんなにいじめられてて、可哀想だから。彫刻にしてあげたら、みんな喜ぶし……素敵な雪の思い出になると思って。先生、危なくないなら、なんでもいいよね?」
「ええ、もちろんよ」
トーコちゃんはずば抜けて図工の才能がある。先日は素晴らしいペーパークラフトを作ってきたばかり。雪の彫刻においても、きっと凄い才能を発揮してくれることだろう。
「やったあ!ありがとう、先生!」
「うふふふ、どういたしまして!」
私は過ちを犯した。
何でもいいとは言った。確かにそう言ったけれど、でも――事前に何を作るか訊いておいても良かったはずだというのに。
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