テレビのリモコン

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テレビのリモコン

これは僕の【好奇心】と【ポケットの中】が、おりなすちょっとした話。 僕は他人のポケットに目がない。 いやいや、すまない、すまない。これではただの変態みたいだ。 改めて言うと、僕は他人のポケットの中身とそこまでの物語を推理する事が、たまらなく好きになってしまったのだ。 キッカケはささいな事だった。 僕は、小鳩(こばと)高校に通う高校生男子だ。 朝のホームルームに、同級の中島 悟(なかじま さとる)が遅刻してきたところから始まる。 「さーせん、さーせん」と申し訳無さそうに入って来た中島に、担任教師が小言を言う。クラスはクス…クスと軽い笑い声が波紋する。 ホームルームが終わり、移動するための小休憩でそれは起きた。 「あっ!」中島の声が教室に響く。 クラスメイトの視線が一斉に中島に集中すると、たちまちにクラスは大爆笑を引き起こした。 僕はあまり他人に興味を持たない性格だと自覚しているが、さすがに気になり持っていた本を盾に覗き見た。 注目を浴びる、中島の手にはが握られていたのだ。 つまり彼は、現代社会において。もとい、現代高校生において必要不可欠であるスマートフォンと間違えてテレビのリモコンを持参してきたと言うことか。 面白い。 それも、遅刻で注目を浴びてからのリモコン登場。かなり出来過ぎてる。 まるで、リモコンを主役にこれまでの行動は全てが布石。お膳立てであるかの様じゃないか。 【面白(おもしろ)指数70】は、あるんじゃないか。ちなみに、面白指数は僕が人間観察する上で勝手に作った指数である。 「嘘だろー。やっちまったー。スマホと間違えて、テレビのリモコン持って来ちまったよー。」中島が言うと。 ドカーンと笑い声が上がる。 「今日一日、リモコンで過ごすしかねぇー。」 ドーンと笑い声がまた上がる。 まるで、某兄弟が活躍するゲームのスター状態だ。 何を言っても爆笑が起こる。無敵だ。 気づけば、僕は盾にしていた本を地面に落とし見入ってしまっていた。
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