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ジョイアはハイドの表情を横目で確認しながら、怖がらせないように慎重に口を開く。
「あなたは、自分自身がただの側近では無いことは重々承知だとは思いますが……」
「はい。分かっています。……僕の仕事とこの絵画に何か関係があるのですか?」
「分かっています……。ですか……。本当の意味で理解っていただけていればいいのですが……」
「……?」
この絵画は1000年前この国が存続の危機にさらされた際、特別な側近者と王子が愛しあい交わった事で国が救われたという言い伝えが残した絵画ということらしい。ハイドはジョイアの言葉にとりあえず意味深げに頷く。
「まず初めに王家として側近を選ぶというのはとても大切なことなんです。そしてあなたの場合は特に……」
「そうですね。10年ぶりの星の子……でしたっけ?」
星の子が生まれるということは、この国に災いが起きるということを意味している。そして本来ならば王子たちは星の子達と愛を確かめ合い選ばれた星の子と添い遂げ、国を守る。
ただ今回は……
〝星の子は僕しかいない〟
「僕が彼に愛されなければいけない……そういうことですよね?」
「……そうですね……」
ジョイアの様子が少し変だなと思ったハイドだがまた何かを問うことも出来ずに歩き続けた。大きなホールに足を踏み入れるとその中は真っ白な壁に四方を囲まれ、2つの赤い絨毯が部屋の端まで伸びていた。天井からは巨大な金色のシャンデリアが垂れ下がり、壁には高価そうな絵画や陶器などが並べられていた。
「ここからは王のプライベートルームでございます」
その言葉にハイドは少し身体を震わせる。
「案内も大方終わりましたし、私はここまでです。では頑張ってくださいね」
そう言ってジョイアは茶目っ気たっぷりに笑ったあとくるりと背を向け歩き出そうとしたその時だった。ガシッとハイドの腕を掴む者がいた。驚いた様子でその者の方を見つめるとそこには王子が立っていた。
「ペオニア様……」
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