信頼を得るということ*

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 目の前にいる男はとても従順で、花街で出会ったどんな女よりも美しく可愛らしい男だった。ペオニアは自分の父であり国王であるイルノアールの星の子の残酷な行動を知っているためどうしてもハイドを信頼することが出来なかったのだ。  清く正しく美しく選ばれた星の子と愛し合い、国を発展へ導く。それだけの事なのに、それがどれほど困難な事なのか……。  ペオニアは寝室へ向かいハイドを起こさないようにそっとベットに潜り込んだ。眠る気にはなれずに寝返りを打っていると、微かに声が聞こえた。それは嗚咽と甘い嬌声だった。初めは何かの聞き間違いだろうと思ったが徐々にはっきりと聞こえるようになるとペオニアは慌てて飛び起きた。  静寂の中目を凝らすと……ハイドは自らを慰めていた。彼の表情は快感に歪み紅潮し、その瞳には涙を浮かべて必死に絶頂を待ちわびているようでその姿はなんとも愛おしく官能的であった。不意に彼の瞳から流れた雫がとても美しく、ペオニアはベッドサイドにあるランプにそっと火を灯すとハイドの姿を照らす。 「ペオニア様……どうしてご奉仕させていただけなかったのでしょうか……至らぬ点が……」
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