エピソード2.

8/9
前へ
/162ページ
次へ
いったいどこからこんなに仕事がわいてくるのか…? 疑問になるほど仕事がやってきて、それからもしばらく、私は仕事に忙殺された。 「…忙しそうだな」 陸と会って数日間、一人残って残業していると、ある日速水さんがコーヒーを2つ持って経理課にやってきた。 「あ…」 手渡された飲み物が、ちゃんとミルクティーだったことに驚く。 3年前、コーヒーが苦手だと話したことがあったけど、まさかそれを覚えてるとか…? …キモっ…! キーボードをカタカタ叩きながら、一生懸命そう思うようにした。 なのに。 「忙しくてデートもできないだろ?」 ふふん…と笑った速水さんが、営業部を回って大量の領収書を集めてきたという。 それが私の残業の元になっているらしい。 なにそれ暇人か…? 「残念ですね?デートならついこの間しましたけど?」 速水さんはじっと私を見て「…それにしては幸せオーラもにじみ出る色気も感じねぇな」と言う。 「…どういう意味ですか…?!」 セクハラで訴えてやる!と怒って…むぅっと頬を膨らませると、満足そうに笑われる。 「…そんな顔してないで、早くやっちゃえ!」 膨らませた頬をピンっと指で弾くと、少し離れた川上課長の椅子に座って机に足を投げ出した。 偉そうに…! この仕事を押し付けた張本人のくせに! イライラに任せてキーボードを叩き、1時間後に終わった。 はぁ…とため息をつくと、後ろの席にいた速水さんが「それじゃ俺も帰るか…!」と言って経理課から出ていった。 いったいなんの用事があってここにいたのか謎のまま、帰り支度をして出口に行くと…。 「送ってやるよ」 怪しい笑顔を浮かべて待っていた。 「あ、いや。別に平気です」 「いいから。俺が押し付けた仕事で遅くなって、後で痴漢に襲われたとか言われたら困るからな」 …近道もあるにはあるけど、墓地の横を歩かなくてはならなくて、ちょっと不気味ではある。 時間は22時を過ぎていて、今から陸に来てもらうわけにもいかないし。 仕方ない。 今日だけ用心棒としてお供させよう。
/162ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7515人が本棚に入れています
本棚に追加