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いったいどこからこんなに仕事がわいてくるのか…?
疑問になるほど仕事がやってきて、それからもしばらく、私は仕事に忙殺された。
「…忙しそうだな」
陸と会って数日間、一人残って残業していると、ある日速水さんがコーヒーを2つ持って経理課にやってきた。
「あ…」
手渡された飲み物が、ちゃんとミルクティーだったことに驚く。
3年前、コーヒーが苦手だと話したことがあったけど、まさかそれを覚えてるとか…?
…キモっ…!
キーボードをカタカタ叩きながら、一生懸命そう思うようにした。
なのに。
「忙しくてデートもできないだろ?」
ふふん…と笑った速水さんが、営業部を回って大量の領収書を集めてきたという。
それが私の残業の元になっているらしい。
なにそれ暇人か…?
「残念ですね?デートならついこの間しましたけど?」
速水さんはじっと私を見て「…それにしては幸せオーラもにじみ出る色気も感じねぇな」と言う。
「…どういう意味ですか…?!」
セクハラで訴えてやる!と怒って…むぅっと頬を膨らませると、満足そうに笑われる。
「…そんな顔してないで、早くやっちゃえ!」
膨らませた頬をピンっと指で弾くと、少し離れた川上課長の椅子に座って机に足を投げ出した。
偉そうに…!
この仕事を押し付けた張本人のくせに!
イライラに任せてキーボードを叩き、1時間後に終わった。
はぁ…とため息をつくと、後ろの席にいた速水さんが「それじゃ俺も帰るか…!」と言って経理課から出ていった。
いったいなんの用事があってここにいたのか謎のまま、帰り支度をして出口に行くと…。
「送ってやるよ」
怪しい笑顔を浮かべて待っていた。
「あ、いや。別に平気です」
「いいから。俺が押し付けた仕事で遅くなって、後で痴漢に襲われたとか言われたら困るからな」
…近道もあるにはあるけど、墓地の横を歩かなくてはならなくて、ちょっと不気味ではある。
時間は22時を過ぎていて、今から陸に来てもらうわけにもいかないし。
仕方ない。
今日だけ用心棒としてお供させよう。
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