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 火の粉はそこら中に踊り舞い、淡い花びらに変わる。まるで私たちを祝福してくれているかのように、それは無数に降り注ぐ。私たちは眩い光に包まれる。全てが白み、形をなくしていく中、貴方の存在だけが何も失わずに色濃く網膜に焼き付いていた。握っている手の甲に指を這わせる。柔く浮き出る血管に少し力を加えて触れると、鼓動の気配を感じる。それが次第に重なって、私が貴方に合わせているのか、貴方が私に合わせてくれているのか、わからないくらいに曖昧で、ひとつになっていく。温もりも痛みも何もかも、高まる全てで満たされて形を失っていく。ああ、もうすぐ、もうすぐだよ。ほら。はらり、はらり、と私が散る。舞い上がって空に向かう。 「愛してる」  柔くふるえる声が縋るように貴方の輪郭を取り戻す。 「愛してるよ」  揺れる声が繰り返し、貴方を貴方たらしめる。  大丈夫。包み込むように貴方の肩を抱いて、解き放つ。  私もーー 「愛してる」  心から。  最後の一片が、ゆっくりと私を掬い上げた。
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