短夜長く

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「いきなり言われても困る。最近のヒット曲とか全く知らないもん」 「そっか。曲とか聞きそうにないもんね」 「聞くは聞くけど、マイナーすぎて誰も聞いてないんだよ」  一応曲名を言ってみた。 「知らない」  だろうね。これまで何人もの人に「なに聞いてんの?」「これだよ」て言って、「ああそれか」と言うふうになったことは一度もない。 「ああ。あれな。確かCDあるぞ」  これが一度目。 「知ってる人を初めて見つけましたよ」 「私も初めて。街中でも聞いたことがねぇ。冬川さん。次はベースいく?」 「はい」  また次も僕にはよく分からないものを持ってきた。結構大きく、重厚感がある。 「楽器ってさ、重くないの?」 「ほどほど」 「種類によって色んなのあるからな。重いやつはクソ重いし、軽いやつはおもちゃかって思うほど軽い」  話をしている間に、また涼が何か曲を弾き始めた。これも僕は知らない。 「冬川さんって、見た目に反して色んなことやってるけど、できないこととかあんのかね」 「あるにはあると思いますけど、あれじゃないですか? すぐに何でも上達してしまったり」 「一理ある」
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