短夜長く

29/69
21人が本棚に入れています
本棚に追加
/225ページ
 そんなこと言っていると、涼の演奏が止まった。ぶっ通しで約十分ほど。 「あー。疲れた。シンセ弾こ」 「電源繋がってないから、繋げてね」 「はーい」  涼は肩で息をしているようだ。 「そんなに体力が必要なの?」 「めっちゃ必要。だから、体力テストDには無理だよ」 「だから何で知ってんのさ?」  シンセサイザーを弾いている間に少し弦楽器を見て周る。今涼が弾いている曲には聞き覚えがあった。シンセサイザーってこんな音するんだっけ? あんまり聞いたことがないし、見たこともないから知らなかった。 「何か気になるものでも? やってみるといいかもよ。冬川さんが教えてくれるだろうし」 「涼なら確かに教えてくれるかもですし、魅力的ですけど……」 「高いよねー」  僕の心を読んだかのように言った。 「ま、気になったくらいでぱっと買えるようなものじゃないからさ。もう少し考えてみたら?」 「ギターかベースならば私が使わなくなったやつあるよ。シンセとピアノも弾きたかったら、家にある。貸そうか?」  やってみたい。とは思っていたので、返事には困らなかった。 「教えてくれるんなら」 「分かった」
/225ページ

最初のコメントを投稿しよう!