短夜長く

30/69
21人が本棚に入れています
本棚に追加
/225ページ
 引き方とかは、動画見たってよく分かんなかっただろうし、ベテランさんが教えてくれるのならば、やらないという手はない。 「ぜひ、自分のが欲しくなったら私のところ来てね。少し値引きしてあげるからさ」 「商売上手ですね」 「そんなこと言ってると、値引きしてあげないよ」 「逆にここ以外の楽器屋なんて知らないですよ」  調べれば出てくるだろうが、最初にここにきて良いところだったとなると、他の場所に行くことがなくなるのはなんでもあるあるだ。本屋でも、古本屋でも……。この二つまとめちゃって良くね?  それから長い間涼の演奏を見ていたが、指の動きを目でも追えず、最終的にそこら辺にあった楽譜の解読にチャレンジしてみた。出来なかったけど。  そして、諦めたところでずっとシンセを弾いていた涼が手を止めて言う。 「忘れるところだった」 「ん?」 「今日は、弦を買いに来たんだよね」  しっかり目的はあったのか。でも、ギターとかベースとかの弦なんて、丈夫そうだが。 「いつも通りでいいの?」 「いつも通りで」 「実は、少しだけ売れちゃってさ。いつもより数少ないんだけどいいかな?多分、十五個くらいはあると思う」
/225ページ

最初のコメントを投稿しよう!