短夜長く

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 駅に戻るまでは途中に店に入って飲み物を買ったくらいで何もなかった。 「そういえば、私に告白した時、何しにきてたの? ただ告白するためだけにあの時間に来るのもおかしい気がするし。成り行きでそうなった感がしなくもない」  あー。そういえばそうだった。最初の目的としては忘れ物を取りに行っただけで、そしたら涼がいて最高の条件じゃんってことで告白したのだが。完全に元の目的は忘れていた。それを説明する。 「結局、忘れ物は持ち帰るの忘れたけどね」 「それは私がいきなり教室から連れ出したってのもある気がするんだけど……」 「大丈夫。次の日に持って帰るのを忘れてって先生に言ったら、珍しいなって言われただけだったから」  実際そんなに大切なものではなく、中のいい先生だったし明日出せよくらいで終わった。その明日が今日のことであって、休日であることに先生は気づいていなかったっぽい。  電車に揺られて僕が降りる駅に近づいたところで、涼とメールを交換していないことに気がつき、手早く交換を済ませ、涼に手を振って電車を降りた。涼の降りる駅はもう一つ先だ。  降りてすぐ、携帯が振動する。 『今日はありがとう』
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