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「あのさ、平山くんに話したいことがあるんだけど……」
だから、この時俺は、古川と付き合ってる未来を、当たり前のように想像してた。
……だけど。
「私、谷口くんと、付き合うことになった」
谷口くん、こと谷口真は、我がバドミントン部の部長だ。
「……古川、谷口のこと好きだったんだ」
「……うん」
うわ、俺、とんだ勘違いヤローじゃん。
なんて、真っ白になった頭の片隅で思ったのと、古川の花がほころぶような笑顔は、今でもはっきり覚えてる。
「そっか。良かったな」
「……うん。だから、平山くんと、今までみたいに話せなくなると思う」
「そりゃそうだろ。……俺も、谷口にいらん誤解されたくねーし」
「それで気まずくなるのはイヤだから、ちゃんと報告しておきたかったんだ。……でも、部のみんなには、絶対秘密にしてね」
必死の思いで笑顔を作って、俺は言った。
「もちろん。……友だちの秘密は絶対守るよ」
友だち、ってフレーズに、めちゃくちゃ力をこめた。
友だちとしてなら、これからも古川のそばにいられる。
そんな打算が働いたから。
「あ、万にひとつもないとは思うけど。なんか悩むこととかあったら、いつでも相談してくれていーぞ」
「友だちだから?」
「……友だちだから」
「そっか。……ありがと」
……こうして俺は、どうしようもなくイタい横恋慕ヤローに成り下がった。
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