たとえば、ポケットの中のゴミみたいに

4/8
前へ
/8ページ
次へ
お互い別々の大学に進学したあとも、古川との付き合いは続いた。 ……とはいっても、3ヶ月に1回くらいのペースで、古川から呼び出されて、俺は彼女の話の聞き役に徹する、みたいな感じだけど。 それでも、古川に会えるのが嬉しい、なんて思ってるあたり、ホント、どうしようもない。 「肉、そろそろいいんじゃね?」 「……だね、早く食べよ」 焼き上がった牛カルビを食べながら、俺は彼女に訊ねる。 「……で、最近どうよ?」 あいまいな質問なのは、あえてだ。 だって、古川が俺に声をかけてくるのは、谷口がらみでなんかあった時だけだから。 「こないだ、真に別れ話された。……他に好きな子が出来たんだってさ」 「マジかよ……ひでーな」 心にもないことを、しれっと口にした自分にヘドが出る。 ……いつか、この瞬間がくるのを待ち望んでいたくせに。 「あっけないもんだよね。……2年半も付き合ってたのに、ごめん、別れよう、の一言で終わっちゃうとかさ」 レモンスカッシュをひとくち飲んで、古川は頬杖をつく。 「ずっとお互い好きって気持ちは変わらない、って信じてた自分が、バカみたい」 谷口と別れてくれれば。 心のどこかで、ずっとそう願い続けてきたけれど。 いざそうなってみると、古川が悲しむところを見たくないとか思ってる。 「……よっしゃ!今日は思う存分、肉、食おうぜ!」 「……だね!どんどん食べるぞぉ!」 ……我ながら、矛盾してるよな。 でも、彼女が笑ってくれて、俺は心底ほっとしたんだ。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加