7人が本棚に入れています
本棚に追加
「ありがとうございましたー」
レジでもらったミント味のアメを、ジーパンのポケットに突っ込んで、俺は古川と一緒に歩きだす。
駅まで送って別れようと思っていたのに、児童公園の前で、古川が急に足を止めた。
「あー、ブランコだ、なっつかしー。ねー、平山くん、ブランコ乗ろうよ!」
不自然なほど明るい口調が、かえって痛々しい。
「……わかった」
あまり帰りが遅くなるとまずいな、って理性と、少しでも長く古川と一緒にいたい、って煩悩で、頭の中がぐちゃぐちゃなまま、彼女の隣のブランコに腰かけた。
「少しだけだからな」
「はいはーい」
生ぬるい夜の風が俺たちの頬をなでる。
「……真のぶぁーか。浮気者」
ブランコをこぎながら、古川がポツリと呟く。
「あんたなんか、机の角に100回足の指ぶつけちゃえ」
ささやかな呪いの言葉を口にする彼女の瞳から、涙がこぼれおちる。
「そんでもって、せいぜいもだえ苦しめばいーんだ。……ばーか」
告白すべきは、今日じゃない。
古川は、全然悪くないよ。
ただ、谷口とは縁がなかっただけの話で。
……みたいな感じで、もっともらしく慰めるのが正解なんだ。
最初のコメントを投稿しよう!