第22話 花束

1/1
132人が本棚に入れています
本棚に追加
/46ページ

第22話 花束

ドアの前にいたわたしは、病室を出て来た眞白さんと目が合った。 「聞いてた?」 「いいえ。中の声は聞こえないですから」 「実習、何時に終わる?」 「多分、6時前くらいには終わります」 「今度は約束守るから。一番最初に会ったコンビニのところで待ってていい?」 「時間、遅れるかもしれませんよ?」 「いいよ、待ってる。すっぽかしてもいいし」 「行きますよ」 「うん、じゃあまた後で」 眞白さんは少し行きかけて、戻って来ると 「ごめん、これ、捨てといて」 そう言って、持っていた花束をわたしに渡して、エレベーターの方に向かって歩いて行った。 この病棟で何度も見た後ろ姿だった。 ほんの少ししかいない時がほとんどだったけれど、それでも、今日はなぜだか一番辛そうに見えた。 志保理さんのための花束。 行き場のない花束(想い)は、あまりにも綺麗で残酷だった……
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!