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『さて、帰るか。』 私が落ち着くまで待っててくれた。 『…あれ?本屋は?』 『ああ…そうそう本屋行かねぇと。』 そんな様子にもしかしたら慰める為に一緒に帰ってくれたのかな?…とふと思う。 見捨てられなかったのかな。 大人なんだなぁ。 公輔に一緒に帰ろうと言われた時は一人になりたかったのに。 今は一緒にいてくれてよかったと思ってる。 まさにアホだな、私。 最初に睨んだりして…。 歩き出す前に、ずっと手に持っていた塊を自転車のカゴのリュックに入れようとしている。 『あのさ…それ、捨てない?』 あらためてリボンも取れてしまった無残な形を見て、持って帰らせるのは心が痛んだ。 『そうだな…じゃあ今食べちゃおうぜ。』 公輔はそう言いながら包装紙を解き、原型を失った小さな粒を4つ取り出した。 そして大きな手で赤い銀紙を剥いた。 『やっぱり握力すげーな。』 笑いながら私の口に『はい』と二つ一気に放り込んだ。 『うわぁ。』 モグモグする私を見てさらに笑った。 自分も二つ食べて『これできれいさっぱり成仏な。』とまたおじさん臭いことを言った。 でも本当に私の気持ちが報われたような気がしてきた。 モグモグする公輔を見て心がトクンと鳴った。 そしてポケットから携帯を取り出して『えっと…連絡先交換しようぜ』と言ってきた。 そんな遠慮がちにしなくても私だってお願いしたいよ? 『うん!』と私も携帯を出した。 すると私の顔を見て『お弁当食べる相手に困ったらすぐ呼べよ』と言ってまたニカッと笑った。 さっきの優しさはただの社交辞令じゃなかった。 公輔の連絡先は御守りのように思えた。 そういえば公輔はチョコレートもらったのかな? 駅に行くまでに聞いてみよう。 もし誰からももらってなかったら、明日お弁当に誘って慰めてくれたお礼にちゃんとしたチョコレートを持ってこよう。 …ふふ。 本当なら学校に行きたくなくなるくらいの出来事だったのに…明日が楽しみになってる。 ありがとう、公輔。
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