三章 愛されない悪の皇女

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(……だって、わたくしはお父様に嫌われているんだもの) なんだか気分が沈んでしまい、ケーキが半分乗った皿を置いた。 「俺はいい」 その言葉に大量に余ったケーキに視線を送る。 このケーキをすべて食べられたら幸せだろう。 さすがの満腹感にキャンディスはお腹を擦った。 (あと三個は食べたかったけど、もうお腹いっぱいだわ) この時ばかりは子供の体が憎い。 (アルチュールにも食べさせてあげられたらいいのに……) そんな思いからケーキを憂いを帯びた瞳で見つめていた。 僅かに見開かれたバイオレットの瞳。 その後にケーキを指さしているヴァロンタン。 給仕がケーキを皿に取り、音を立てないようにテーブルに置いた、 そして皿とフォークを手に取ったかと思いきや一口、口に運ぶ。 (た、食べたの……?なんでかしら) 先ほど、いらないと言っていたが気が変わったのだろうか。 何故かケーキを食べると「甘いな」と言って、紅茶のおかわりを要求をしている。 (もしかしてわたくしが一緒にケーキを食べたいと思ったから、とか?それで食べてくれたのかしら……ううん、そんなわけないわ) キャンディスはもしそうならばと思ったものの、すぐに気のせいだと思い直す。
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