三章 愛されない悪の皇女

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「待ってください、お父様……!」 無意識にお父様と呼んでいたことにも気づかないまま服の裾を引いた。 今までにないくらい驚いているヴァロンタンを見て、自分が何を言ったのかに気づいて口元を押さえた。 しかし今は照れている場合ではないと「皇帝陛下、この度は美味しいケーキをありがとうございました」と目を見てお礼を言った。 (ジャンヌに何かをしてもらまた時はお礼をと教えてもらったもの!) キャンディスはお礼を言えたことに得意げだった。 しかしヴァロンタンは僅かに振り向いてから何も言わずに去っていってしまった。 それにはさすがにショックを受けた。 (わたくしからの御礼なんていらないと……そういうこと!?) キャンディスはユーゴに声をかけられるまでその場で立ち尽くしていた。 「皇女様、もうお部屋に戻られますか?」 キャンディスはゴクリと唾を飲み込んでゆっくりとユーゴを見た。 「ユーゴ、わたくし……生き残ったわ」 「…………はい?」 「わたくし殺されなかったのよ!」 「どんな決意でここにいらしたんですか?」
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