三章 愛されない悪の皇女

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なにしろキャンディスはまだ五歳の子どもである。 ただ中身には一度、悪の皇女キャンディスとして生きていた記憶を持っている。 頭を打ちつけて記憶を取り戻したが悪の皇女として辿ってきた軌跡は無駄にはならない。 でなければまた同じ道を辿っていただろう。 死ぬ前の人生ではキャンディスは常に息苦しさや閉塞感を感じていたが今は胸がいつも温かい。 安心感があるし怒ったりイライラすることも減った。 むしろ何かから解放されてスッキリとしている。 (あと十一年、なんとか生き残らないと……!わたくしが〝いい皇女〟になれば死刑への道は遠のくはずだわ) 以前、虐げていたアルチュールとの仲は順調どころか、キャンディスにとってなくてはならない存在になりつつある。 仲良くするのは作戦だったはずなのに、まさかのキャンディスが絆されるという異常事態が発生した。 リュカとは仲はいいとは言い難いが、以前とは少しだけ距離が近づいておりまた少し違った関係性だ。 幼少期、キャンディスは書庫に滅多に出入りすることのなかったためリュカとの接点があったのは彼がブルー宮殿に完全に閉じこもるようになってからだ。
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