四章 皇女は立ち向かう

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(もしかして……わたくしは犯人を捕まえるために囮にされたということ!?わたくしはこの時からそれほどまでに嫌われていたと、そういうことなのね!?) キャンディスは前の記憶を含めて、悪い方向にしか考えられなくなっていた。 むしろ今までこの考えに至らなかった方がおかしいと考えるべきだろうか。 そして後々気付いたのだが、ヴァロンタンは痺れ薬を飲まされていたキャンディスを抱えていたせいで服は再びヨダレまみれだったそうだ。 薬のせいで口元に力が入らなかったので涙や鼻水、ヨダレでべっちょりと流れ続けていた。 初めて部屋に行った際も居眠りをした挙句、ヨダレを垂らしたりと失礼なことしかしていない。 (好かれることを何もしていないわ。もう好かれる必要もないからいいのだけれど……) 顔を見るたびに『愛されたい』と心の奥底にしまったものが疼くような気がした。 ヴァロンタンはユーゴに念を押すように「必ず皇女を守れ」と言って剣をしまっていることに、まったく気づかないままキャンディスはどんよりとした気分で顔を伏せていた。 そしてキャンディスがバイオレット宮殿で暮らして三日ほど経った頃だった。 そろそろホワイト宮殿が恋しくなってくる。 エヴァとローズ、アルチュールやジャンヌに会えないことがこんなにも苦しいのだと初めて知ったのだ。
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