序章 悪の皇女は愛されない

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胸に手を当てて誇らしげに微笑みながらも自分の成果を披露するキャンディスを見て父の眉がピクリと動く。 美しいドレスも髪も、すべてが血に濡れて赤く染まる。 亡き母の形見だという金色のペンダントが血を吸って怪しく輝いていた。 誰かが『悪魔だ……悪の皇女』だと言った。 キャンディスはその言葉を掻き消すように手を合わせる。 「ああ、そうだわ!お兄様たちもわたくしの邪魔をするから処分いたしました。でも構いませんわよね?だってお父様の跡を継げるのは一人だけ……強い者に継がせると言いました。これでお父様の跡を継げるのはわたくしだけですもの」 確認するように言ったキャンディスの背後には、兄たちの死体が無惨にも転がっている。 悪気なく玩具が壊れただけだと言いたげなキャンディスに会場が静まり返っている。 ラベンダー色の瞳は血走って唇は大きく歪んでいた。 キャンディスの婚約者、ジョルジュが眉を顰めてキャンディスに剣を向ける。 先ほどの父を見る視線とは一転して、キャンディスは鋭くジョルジュを睨みつけた。 「ジョルジュ……わたくしに剣を向けるなんてどういうつもり?あなたはわたくしに文句ばかり。そんなに死にたいの?」 「僕はやはり君が嫌いだ。もう許すことはできない」
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