四章 皇女は立ち向かう

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そんな気持ちを知ってか知らずか、ヴァロンタンはキャンディスに背を向けて立ち上がる。 「……持ち帰るなら好きにしろ」 「…………!」 そんな言葉を残してヴァロンタンはいつものように去っていく。 ユーゴがヴァロンタンの言葉を補足するように「今度から、みんなに配る用にお菓子を持ち帰っていいそうです」と付け加えた。 最近、アルチュールはバイオレット宮殿に言った後にキャンディスが侍女に頼んでこっそりと持ち帰っていたお菓子を楽しみにしている。 しかし少量だけなためジャンヌやエヴァ、ローズの分がないことを少し不満に思っていた。 今日もヴァロンタンとユーゴが去った後に頼もうと思っていたが、どうやらバレていたようだ。 仲良くなったバイオレット宮殿の侍女たちが「よかったですね。皇女様」と言いながらお菓子を丁寧に包んでくれる。 ユーゴがアルチュールではなく『みんな』と言ったことが引っ掛かる。 (なんで知っているのかしら……バレないようにちゃんと部屋の中で食べていたのに) しかしバイオレット宮殿の侍女たちが知らせたのだろうと特に気にすることはなかった。 扉の外で待っていたエヴァとローズに今日の収穫を報告する。
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