序章 悪の皇女は愛されない

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「黙りなさいっ!このわたくしにそのようなことが言えるのはこの世界でお父様だけなのよ。わたくしだって本当はお前など大嫌い。婚約してやっただけでもありがたいと思いなさい」 「……話にならないよ」 「わたくしに殺されたいのなら、早くそう言ってくれたらよかったのに!」 「もうやめてくださいっ」 「──お黙りッ!」 キャンディスの言葉に、今まで父とジョルジュの背後に隠れていた妹のルイーズは肩を揺らした。 「穢らわしい血を持つ分際で、わたくしに意見するなんて何様のつもりかしら」 「……もう、やめてくださいっ!これ以上、大切な家族を奪わないでぇ」 「泣くな、ルイーズ」 「……っ、お父様」 「大丈夫だ。私が必ずルイーズを守る」 「ジョルジュ様もありがとうございます」 父が大切そうに脇に置くのは父の血を引きながらも平民として育った異母姉妹のルイーズ。 いつもヘラヘラと笑っている馬鹿で目障りな妹とも呼ぶのも悍ましい悪女は最愛の父とキャンディスの婚約者だった男に挟まれながら肩を揺らして怯えている。 何より許せないのは頬には涙が伝っていて父の指が優しく頬を拭っていること。父に触れていること。 そして父や兄弟達を籠絡して、キャンディスの居場所を奪いとろうとしたことだ。
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