序章 悪の皇女は愛されない

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「あなたがお父様に愛されるわけないわ」 「──ッ!?」 一瞬、空耳かと思ったが明らかにルイーズが発した言葉だと思った。 振り向くとそこには、父とルイーズが寄り添う二人の姿があった。 (そこは……わたくしの居場所になるはずだったのに) 首元に強い感覚を覚えた。 誰かに殴られたのだと思ったが、キャンディスには抵抗する気力は残されていない。 そこから視界が真っ暗に染まった。 意識を取り戻したキャンディスが目を覚ますと、そこは牢の中だった。 先ほどあったのが現実なのだと思い知る。 それからどのくらいの時間が経ったのだろうか。 侍女も現れないどころか誰もキャンディスを人として扱わない。 罪人になったキャンディスの生活も立場も一瞬にして最下層に落ちてしまう 天井からポタポタと落ちてくる汚れた水。指が動かなくなるほどの冷たい石の床。 鉄格子の隙間から投げ込まれるカビだらけのパンや石、罵詈雑言に抵抗する気力もない。 あんなにも輝いていたドレスは血を吸って黒く薄汚れている。 カチャリと胸元にある金色のペンダントが揺れた。 どうやらパーティーの時のままの格好のようだ。  
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