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二
「とんかち頭は撃破しましたっ! 住民の皆さんは安心して下さいっ!」
アローヘッドに出現したとんかち頭という怪獣は怪獣自衛隊によって倒され、それからというもの現れた怪獣には連戦連勝し、怪獣自衛隊は強いという事を世間に知らしめるいっぽうで、怪獣の研究もされて来た。とんかち頭は死亡しても、体中に病原菌がいないか、未知のウイルスを持っていないかなどが懸念され、細胞を採取出来る科学者はいなかった。しかし、とんかち頭の太い脚についていた一匹の山蛭が採取された。
とんかち頭から鱈腹体液を吸い上げた山蛭は風船のようにぱんぱんに膨らんでいたようで、その体液から遺伝子の構造を分析したが、どの生物とも一致しなかった。とんかち頭が現れた原因については生物実験で生まれた生物説もあれば、どこかの国が飛ばして来た飛翔体が海中で爆発して汚染された可能性が高いと学者たちはそう論じているが真相は誰もわからない。
怪獣自衛隊最強説と空前の怪獣ブームに湧いたアローヘッドだが、新たな怪獣つるはし頭の出現によりあっけなく終焉を迎える。
「つるはし頭に通常兵器が通用しないっ! どうなってるんだ?」
「核弾頭ミサイルをぶち込むしかないのか!?」
「それをやったら一般人まで巻き込むぞ!アローヘッドを焼け野原にするばかりか、何万ベクレルの放射性物質があらゆるものを汚染してしまう」
「持てる限りの最新鋭の兵器を投入するしかないっ!」
「それまで持ちこたえられるのか? 畜生、とんかち頭が防衛線を突破してしまう。逃げ遅れた者はいないか?」
「女の子が一人!」つるはし頭は私の目の前まで迫って来ると、こちらを大きな目で見下ろしていた。恐怖で体が動かない。頭が真っ白になっていて何も考えられない。
「アメリア、逃げろおおおおっ! 速く逃げるんだアメリアっ! アメリアっ!」
誰かに呼びかけられてはっと目が覚める。幼い頃の経験を夢で見ていたようだ。
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